とある昼下がりパークさんが何やら困った様子です。
パークさん それがね,先日母方の祖父が亡くなったんだけど,遺言書が出てきたみたいなの。祖母はもう既に亡くなっていて,私の母と,母の兄の二人の兄妹が相続人なの。ところが,どうやら,その遺言書によると,全遺産を母の兄に相続させるという内容みたいなの。それで,母が,あんなに面倒みてあげたのに……と,どうしても納得いかない様子なの。それで力になってあげたいと思っているんだけど……。
そうか……。大変だね。遺留分とか何とかいうものがあるらしいけどあまりよく分からないし……。そうだ日比谷先生に相談してみよう。
実は祖父の相続の件でご相談があって。遺言書が出てきたみたいなんですが,その後はどうなるのですか?
まず,遺言書が自筆証書遺言なのか,公正証書遺言なのか確認する必要があるね。自筆証書遺言であれば,家庭裁判所で検認の手続を行う必要があるんだ。
よく聞かれるんですけど,検認をしないと遺言書は無効になるのですか?
そういうことはないよ。検認は遺言書の有効・無効とは関係しないんだ。まあ,検認は,このような内容の遺言書があることを裁判所が確認してくれて,その後に改ざんされることを防止するというものだね。
今回,自筆証書遺言だったのですが,検認前に叔父さんが開封したみたいなんです。私が調べたところによると,開封は家庭裁判所で行わなければならないことになっているはずなのですが,遺言書は無効にならないのですか?
よく知っているね。たしかに,開封は家庭裁判所で行わなければならないんだけど,仮に家庭裁判所以外の場所で開封されたとしても遺言書は無効にはならないんだ。
そうなんですか……。ところで,今回の遺言の内容が相続人のうちの一人に全遺産を相続させるという内容なのですが,これに不服だった場合どうすればよいのですか?
その遺留分というのがよく分からないのですが,どういうものなのですか?
そうだね。難しいんだけど,簡単に一言で言うと,「最低限の取り分」ということかな。今回のパークさんのケースで言えば,たとえ遺言書で長男さんに全遺産を相続させることになっていたとしても,遺留分については,「最低限の取り分」なので,お母様は,その遺留分について請求していくことができることになるよ。
遺留分というのは,当然確保されるんですか? 何か請求とかする必要があるんですか?
重要な点だからよく聞いて欲しいんだけど,遺留分については,遺留分について請求する人が,相続の開始及び遺留分を侵害するような遺贈等が行われたことを知ってから1年内にその請求権を行使する必要があるんだ。一般的には,内容証明郵便によって請求することが多いね。このように,遺留分というのは,黙っていて確保されるものではないので注意が必要だね。
どこかで聞いたんですけれど,1年内に遺留分減殺請求権を行使して,それから6か月以内に調停や裁判を申し立てる必要があるのですか?
その必要はないよ。1年内に遺留分減殺請求権を行使すれば権利は確保されることになるんだ。この点で,一般的な消滅時効,たとえば業者以外の私人から借りたお金を返す債務の10年の消滅時効,とは違うんだ。一般的な場合には,裁判外で請求した場合であっても,6か月以内に訴え提起等をしないと時効の中断効は生じず,権利が消滅してしまうことになるんだ。
そうなんですか。とりあえず遺留分減殺請求をすることが重要なようですね。遺留分て,何だかよく分からないことが多いですね。またご相談させていただけますか?
いつでもどうぞ。遺留分については難しい問題が多いので弁護士と相談しながら進めた方が良いと思うよ。できる限り力になるから早めに相談してね。